株式会社Eパートナー

COLUMN

休職者支援に取り入れたい3つのポイント

 働く人のこころの不調が経済に及ぼす影響が大きくなっています。横浜市立大学と産業医科大学の共同研究では、心身の不調を抱えながら仕事を続けることで国内全体で約7.6兆円の経済損失が生じているとの結果が示されました。この金額は日本のGDPの1%強に相当します。働く人がこころの不調を起こさない組織づくりのキーワードは「予防」と「再発防止」です。この記事では再発防止に着目し「休職者への支援に取り入れたいポイント」を3つ取り上げます。

休職者支援に取り入れたい「出張面談」

【休職者の相談形態】
出張面談 ・・・ 62.7%
電話・メール ・・・ 17.8%
WEB面談 ・・・ 14.9%
来所面談 ・・・ 4.6%

(2025年4月~9月 当社の相談実績より)

半数以上が「出張面談」を希望

 2025年4月から9月までに当社が行った職場復帰支援では、実に半数以上のご相談者が出張面談を希望されました。オンラインや相談室への来所を含めると面談の比率は8割を超え、カウンセラーと直接会って話したいというニーズが高いことがうかがえます。

 多くの方が利用されている出張面談は、カウンセラーがご相談者の希望場所に赴いて行う面談方式です。療養で休職していて体力や気力が回復期にある方は、交通機関を利用してカウンセラーが待つ相談室を訪れるのは容易ではないでしょう。療養以外でも育児や介護で仕事をお休みしているケースでは長い時間自宅を空けられない方もいます。また、休職の初期は自宅近く、復職時期が見えてきたら職場の近くのように面談場所を選ぶ方もいます。

 ご自身の状況に合わせた環境で不安や悩みを話せるのは出張面談ならではの利点であり、休職中の方の利用しやすさにもつながっているようです。

休職者との面談ではどんなことを話しているか

 休職者との面談のテーマは多岐にわたります。これまでの振り返りからこれからの働き方や生き方まで、ご相談者に合わせたテーマで対話が重ねられます。いくつか例を挙げましょう。

□体調を崩した要因
□休職に至った経緯
□生活リズムの整え方
□日々のストレス対処
□リワーク施設の選び方
□コミュニケーションスキルの習得
□産業医面談に向けての心構え
□再発防止策
□復職後の働き方 など

 もちろん、これだけではありません。不安や悩みは人それぞれで複雑に絡み合っています。ご相談者のお話に耳を傾け、絡み合った事柄をひとつひとつ丁寧にほどきながら課題解決に向けたサポートができれば、休職から復職、復職後の職場への定着までスムーズに進められるでしょう。

 ここでは対人援助や心理学の専門知識を持った人材が活躍します。

休職者支援に取り入れたい「外部機関との連携」

【休職者への支援開始のきっかけ】
人事・産業保健スタッフからの依頼 ・・・ 72%
本人からの申し込み ・・・ 28%

(2025年4月~9月 当社の相談実績より)

情報共有の難しさ

 休職者支援に外部機関を活用する企業も増えています。当社が行っている休職者への支援も7割以上が人事・産業保健スタッフからの依頼によるものです。

 外部機関を活用するにあたり課題となるのは支援に関連する情報の共有ではないでしょうか。外部機関は社外の機関ですので、企業独自の社内規定などを熟知していないこともあります。外部機関を上手く活用するには休職・復職に関する社内規定やルールを共有しておくと良いでしょう。情報の共有により外部機関が組み立てる支援プランも企業の方針や考え方に則ったものになり、支援の方向性がずれてしまうといった事態を防ぐことができます。

情報連携の仕組み化

 休職者の支援を外部機関に依頼する場合、ご本人の状況や支援の進捗を把握したいケースがあるかもしれません。そこで、外部機関を含めた関係部門間でスムーズな情報連携が行える仕組みをつくっておくと良いでしょう。例えば、定型の文書フォーマットを作成する、関係部門が定期的に話し合える機会を設けるといった方法があります。

□定型フォーマット(例)
支援依頼書
・外部機関に支援を依頼する際に利用
・対象者名、休職に至った経緯、復職に必要な要件、外部機関への依頼事項などを記入
支援報告書
・依頼を受けた外部機関が報告を行う際に利用
・ご本人の回復状況、支援計画などを記入

□定期カンファレンス(例)
・産業保健スタッフや人事担当者、外部機関の担当者など支援関係者によるミーティング
・支援に関する情報共有や支援プランを話し合う

 外部機関を活用すれば、社内スタッフだけでは手が届きにくい事業所など、より広い範囲に、きめ細かい支援を届けることができます。 休職者支援を効果的に進めるには外部機関との連携がカギとなります。

休職者支援に取り入れたい「家族へのサポート」

【職業生活での不安、悩み、ストレスを相談した相手】

家族・友人 ・・・ 62.1%

厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」

家族へのサポートは見落とされやすい

 厚生労働省の調査によると、働く世代が不安や悩みを相談する相手は家族・友人が最も多いとされています。休職者支援の面からも、ご本人と生活を共にする家族は最も身近な相談相手であり、生活面でのサポート資源でもあります。ご本人を支える家族が抱える不安や悩みを軽減することも、休職者支援のひとつの柱かもしれません。しかしながら社内スタッフのみで対応するのは現実的ではないかもしれません。

 もし外部相談機関を利用しているのであれば、家族からの相談にも対応しているか確認しておくとよいでしょう。サービス内容によって「配偶者のみ」や「同居家族に限る」など、利用できる家族の範囲が決められているケースもあります。

【まとめ】復職後も安定して働けるように

 この記事では、「休職者支援に取り入れたい3つのポイント」をご紹介しました。休職者支援は復職がゴールではありません。復職した後も安定して働けるよう心身を整えるには休職中の過ごし方が重要です。再発防止の効果をより高めるために「出張面談」、「外部機関との連携」、「家族への支援」について検討してみてはいかがでしょうか。
 休職者支援の取り組みは不調者を発生させない「予防」にもつながります。

(参考)
横浜市立大学
「メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に—GDPの1.1%に相当と試算」
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2025/20250611hara.html
産業医科大学
「メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に―GDPの1.1%に相当と試算」
https://www.uoeh-u.ac.jp/University/Corporation/press/20250613.html
厚生労働省
「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r06-46-50b.html

従業員のメンタルヘルスケアは「Eパートナー」のEAPサービスにお任せください!

 公認心理師や産業カウンセラー、臨床心理士の資格を保有する専門家が、カウンセリングやメンタルヘルス研修、メンタルケアのコンサルティングなど、企業様のEAPをトータルで支援します。カウンセリングは全国各地で対応可能です。それぞれのお悩みにしっかりと耳を傾け、解決へ向けてご提案します。

 従業員のメンタルヘルスが健全な状態になれば職場の生産性も向上することでしょう。Eパートナーならフットワークが軽く、タイムリーな対応が可能です。従業員のメンタルヘルスケアに課題をお持ちなら是非ご相談ください。