目次
メンタルヘルスとは「心の健康」という意味です。WHOでは「人が自分自身の可能性を認識し、生活における通常のストレスに対処することが可能で、生産的かつ実りある仕事ができ、さらに自分のコミュニティに貢献できる健康な状態(ウェルビーイングな状態)」と定義づけています。私たちは心が健康であるからこそ、仕事をはじめ様々な社会生活を営むことができます。ストレスを抱えることで、メンタルヘルスの不調につながり、そのままにしておくと心身の健康を害し、やがて自ら命を絶ってしまうという結果にもなりかねません。
世界では100人に1人以上が自ら命を絶っており、とりわけ自殺者の58%は働き盛りの50歳以前に発生しています。WHOでも厚生労働省でも、人々のメンタルヘルスケアは重大な課題として捉えているのです。
(出典:『WHO : メンタルヘルスとメンタルヘルスケアを変革する緊急の必要性を強調【報告書】』)
メンタルヘルスとは何も特別なものではなく、重大な病気や病状を指すとは限りません。何かしらのストレスや悩みを抱えながら働いているという方が大多数で、誰もがメンタルヘルスの不調に陥る可能性があるということは念頭に置いておきましょう。
厚生労働省が令和4年に実施した『安全衛生調査』によると、令和3年11月1日から令和4年10月31日までの1年間でメンタルヘルスの不調によって連続して1ヶ月以上休職もしくは退職した従業員がいた事業所は全体の13.3%という結果が出ています。10社あれば1社にはメンタルヘルスの不調で職場を離れることを余儀なくされてしまった従業員がいるということになります。
しかも、前回調査よりも3.2%上昇しており、より問題が深刻化しているのが実情です。総務・人事担当者や経営者にとっては、社員のメンタルヘルスケアは他人事ではありません。
(出典:令和4年労働安全衛生調査(実態調査)、調査者:厚生労働省、調査期間:令和3年11月1日~令和4年10月31日、調査対象:全国18,000人の常勤労働者や派遣社員)
同じく厚生労働省の令和4年度『安全衛生調査』では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.4%という結果となっていて、令和3年度の調査結果である59.2%よりは高くなっています。取り組み内容としては「ストレスチェックの実施」が最も多く63.1%、ついで「メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施」が53.6%、「メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備」が46.1%という結果になっています。
厚生労働省においては令和9年度までにメンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合を80%以上にすることを目標として掲げています。メンタルヘルス対策に取り組む事業所は増えてきてはいるものの、まだまだ目標には達していないという結果が明るみになりました。
(出典:令和4年労働安全衛生調査(実態調査)、調査者:厚生労働省、調査期間:令和3年11月1日~令和4年10月31日、調査対象:全国18,000人の常勤労働者や派遣社員)
社員がメンタル不調に陥ることで、以下のような事態が発生します。
また、社員がメンタルヘルスの不調を抱えてしまった結果、企業としても以下のような影響を受けることになります。
社員の心身の健康を守り、以上のような事態を防ぐためにも、メンタルヘルス対策は早急に実施する必要があります。
社員がメンタルヘルスの不調に陥る理由は人によって様々です。ここからは職場でよく発生しがちなメンタルヘルス不調の原因について見ていきましょう。
まず挙げられるのが過重労働です。残業や休日出勤が発生すると十分な睡眠時間や休養時間が確保できず、心身を休ませることができません。過重労働が続いた結果、ストレスがどんどん溜まってしまい、集中力が欠如したりミスが頻発したりするようになり、やがて心や身体の不調にもつながってしまいます。
今、働き方改革で多くの企業においては過重労働をなくす方向に進んではいますが、1ヶ月間に時間外・休日出勤が80時間を超えた月があった労働者の割合は2%という厚生労働省の調査結果も出ており、未だ改善しきれていないのが実情です。
パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの立場を利用したハラスメント行為のほか、職場内のいじめや人間関係の悪化によって心身に苦痛を受けた結果メンタルヘルスの不調に陥ってしまう方も少なくありません。
厚生労働省が実施した調査によると、仕事や職業生活に関するストレスを抱えている労働者の割合は82.2%で、そのうちハラスメントを含む対人関係に悩んでいる方の割合は26.2%にものぼります。
2019年に労働政策綜合推進法が成立し、パワーハラスメントの防止対策が事業主の義務となりましたが、依然としてハラスメントに悩んでいる方は少なくありません。
厚生労働省が2006年に定めたガイドライン『労働者の心の健康の保持増進のための指針』では、メンタルヘルス対策のために特に重要な『4つのケア』について挙げています。
ここでは4つの重要なメンタルヘルスケアについて、それぞれどういった内容か順番に見ていきましょう。
セルフケアはそれぞれの従業員が自分自身で行うメンタルケアのことを指します。特に重要なのは自分でストレスを抱えているかどうか、不調は出ていないかどうかを把握することです。
たとえば「気分が重い」「不安を感じる」「なかなか眠れない」などの心身の変化に気づいて早めに対応することで、深刻な事態を防ぐことができます。
ラインケアとは部門単位で管理職が行うケアのことです。部下の様子を注視したり対話をしたりすることで状態を把握し、それに合わせた対策をとります。
「顔色が悪い」「表情が暗い」「遅刻が多くなった」など部下の様子に変化が見られたら相談に乗り、本人に対するケアや職場環境の改善を行います。また、ストレスチェックなどの取り組みも実施します。
こちらは事業場(同じ建物または同じ敷地内の建物群)内に産業医やカウンセラーなどが常駐して行うメンタルヘルスケアを指します。事業場内産業保健スタッフが職場巡視を行って各従業員の様子を見たり話を聞いたりする、窓口として相談に乗る、セルフケアやラインケアなどに関する研修を行うなどの方法でメンタルヘルス対策を行います。
ただし、従業員の不調の早期対応や職場環境の改善につなげるためには、企業と産業医・カウンセラーなどとの連携が欠かせません。
具体的な取り組み方法として内部EAPというものがあります。内部EAPに関して詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
こちらは社外の専門家によるメンタルヘルスケアのことを指します。外部の機関や企業、あるいは専門家と契約を締結し、産業医やカウンセラーなどが相談窓口としての役割を果たし、各従業員のストレス状況の把握、ケアなどを委託します。
上記の3つのケアと異なるのは第三者機関が実施するという点です。特に職場の人間関係の悩みやハラスメントの悩み、家族の悩みなどは、上司や管理職、あるいは会社側とつながりがある事業場内産業保健スタッフには相談しにくいものです。第三者の立場だからこそ相談できる悩みやケアがしやすくなるという側面もあります。
具体的な取り組み方法として外部EAPというものがあります。外部EAPに関して詳しくはこちらのコラムをご覧ください
以上のように、職場でのメンタルヘルスケアは非常に重要で、その中の一つの手段としてEAPというものがあります。職場におけるメンタルヘルスケアをどのように進めていけばいいのか?最後にケアの流れやポイントについてご説明します。
職場におけるメンタルヘルスケアでは「社員がメンタルヘルス不調に陥ることを防ぐ」という予防が非常に重要となってきます。メンタルヘルスに関する研修などを行い、職場を取りまとめる管理職や社員自身にもメンタルヘルスケアの重要性や方法に対して理解を深めてもらうことが大切です。
また、ストレスチェックを行うことで社員一人ひとりののストレス状況が把握できるようになり、いち早く対策が打てるようになります。これに加えて管理職や総務・人事担当者が社員の顔色や言動などをしっかりと見て、細かい変化や不調の兆候を見逃さないことも、メンタルヘルス不調を防ぐうえでは重要です。
仮に社員がメンタルヘルスに不調をきたしてしまった場合は、いち早い対応が必要となります。管理職や産業保健スタッフなどが相談に乗る、産業医や医療機関の受診を勧める、休職を提案するなどの対応を行いましょう。
また、外部EAPサービスを用いてカウンセリングを利用してもらうというのも手です。特に職場に対する不満や人間関係の悩みに関しては管理職や保健スタッフなどには話しづらいものです。第三者が相談に乗ることで、本音を打ち明けてくれるという効果も期待できます。
メンタルヘルス不調に陥った社員が休職した場合、総務・人事部門や管理職は当該社員の職場復帰にむけて動き出す必要があります。職場復帰支援の計画を立て実施する、職場の環境を改善して再発を防止するなどの取り組みが必要となります。
とはいえ、なかなか不調が改善されず職場復帰を果たせないまま離職してしまうケースも少なくありません。やはり職場復帰についても外部EAPの力を借りることで、第三者としてメンタルヘルス不調をきたした社員の相談に乗れてサポートできる、職場環境の改善に関するアドバイスが受けられるなどのメリットが得られます。
メンタルヘルスの不調は社員の心身の健康や生活に大きな影響を及ぼします。また、会社にとっても人材が心身の健康を害すれば大きな損失につながりかねません。企業は社員がメンタルヘルス不調をきたさないよう予防し、万が一不調を抱えてしまった場合はいち早く対応し、職場復帰までサポートする必要があります。
しかし、限られたリソースのなかで万全の体制を整えるのは容易ではありません。ケアを行うためには専門的な知識やスキルも必要です。そこで、ノウハウが豊富な外部EAPの活用も検討してみましょう。
社員のメンタルヘルスケアはEパートナーにご依頼ください。公認心理師や産業カウンセラー、臨床心理士の資格を保有する専門家集団が在籍し、カウンセリングやメンタルヘルス研修、メンタルケアのコンサルティングなど、トータルで企業様のEAPを支援。特にカウンセリングに関しては全国各地で対応可能です。社員の方のお悩みにしっかりと耳を傾け、いち早くストレス状況を把握し、先回りして対策をご提案します。
社員のメンタルヘルスが健全な状態になれば、職場の生産性も向上するはずです。Eパートナーならフットワークが軽く、タイムリーな対応も可能です。メンタルヘルスケアの課題はぜひご相談ください。